拡大
越前紙漉

冨田渓仙作家解説
1879/12/9(明治12年12月9日)-1936/7/6(昭和11年7月6日)
トミタケイセン
Keisen TOMITA

J-212
越前紙漉
エチゼンカミスキ

制作年:大正15年頃
サイズ:35×97cm
技 法:絹本着色

昭和62年度 購入

 福井県越前市の大滝・岩本・不老・新在家・定友の五箇地区は古くから越前和紙の特産地として知られ、村人に紙漉きを教えたという川上御前が紙祖神として岡太神社に祭られ、人々の心の拠り所となっている。本図は左に岡太神社と思われる建物を配し、山奥から流れる清らかな川の水を利用した和紙漉きの工程が描かれている。画面左では冷たい水に手を浸して原料の楮から塵やごみを取り除き、右奥建物内部では漉き舟で紙を漉き、右手前には漉きあがった紙を天日干しする様子が描かれる。いずれもてきぱきと楽しげに立ち働く女性たちの姿である。
 渓仙は大正14年に越前の紙漉きの現場を見学してスケッチを行い、その風景を何度か日本画に描いている。日本画家たちが日本全国の風俗を分担して描いた大正天皇・皇后銀婚式のための献上絵巻(大正15年)に「越前紙漉」、再興第15回院展(昭和3年)に「紙漉き」(二曲一双屏風 絹本著色 東京国立近代美術館蔵)を発表しており、本作はそれらの作品の前後に制作されたと考えられる。
 越前和紙の紙漉き職人、岩野平三郎(初代)との付き合いも深い。岩野は大正4年頃から美術紙の開発を試みて著名な芸術家に見本を送って改良を重ねており、渓仙も見本を送られた作家のうちの一人であった。

カード番号(25)