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池畔

竹内栖鳳作家解説
1864(文久04年)-1942(昭和17年)
タケウチセイホウ
Seiho TAKEUCHI

J-340
池畔
英語 Pool Side

制作年:1939
サイズ:39.5×44.0
技 法:絹本淡彩
形 状:軸装 

度 齋藤慶四郎氏 寄贈

本図は昭和14年、栖鳳75歳晩年の作である。亀と蛙を洒脱な筆致で描いた生物画である一方、軽妙飄逸な俳画的世界観を有した粋な小品である。箱裏に書かれた文章から、一池の友の亀と蛙が詩歌を語る場面だと分かる。また亀は郭隆、蛙は紀貫之をあらわす。
紀貫之は『古今和歌集』の序文で「花に啼く鶯水に住む蛙の声を聞けば生きとしいけるる何れか歌を詠まさりける」と書き、和歌は心に思うことを様々な事象(花鳥風月)に託して表現するものだと定義した。郝隆(かくりゅう)は後漢末から東晋までの逸話を集めた『世説新語』に出てくる人物で、陰暦7月7日の虫干しの日に、一人日向に仰向けで寝そべり、腹の中の書物をさらすのだと言ったという。栖鳳は箱書きにこのようなことを書き、「高下駄を陽に乾す残暑哉」と結んでいる。
栖鳳の生き物の生態表現は大正末から昭和にかけての円熟期に頂点に達し、なかでも蛙はその艶やかさやすばしっこさが愛され、昭和に入ってから画中にしばしば登場した。対する亀は便々たる腹を見せた意表をつく姿態で、この絵に滑稽味を与える。昭和14年11月頃箱書するにあたって「池畔」と変題。