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竹生島(妙音)

小林古径作家解説
1883(明治16年)-1957(昭和32年)
コバヤシコケイ
Kokei KOBAYASHI

J-220
竹生島(妙音)
チクブジマ(ミョウオン)

制作年:明治33~40年頃
サイズ:143.5×71.5cm
技 法:絹本着色

昭和64年度 購入

 小林古径は新潟県高田(現上越市)生まれ。上京して梶田半古に師事、巽画会や今村紫紅らの紅児会に入会し研鑽を積む。また大正3年の日本美術院再興に際しこれに参加、以後同人として安田靫彦、前田青邨らとともに横山大観らに次ぐ日本美術院の代表作家として活躍した。理知的構図と厳しい筆線、清々とした色彩による格調高い作風で、近代日本画における新古典様式確立者の一人となった。
 本作は『平家物語』に取材したもの。木曽義仲討伐のため京より北国へ向かう平経正は、途中、琵琶湖の竹生島に参詣した。その折り、琵琶の名手であった経正が神前にて上玄石上の秘曲を奏でたところ、そのすばらしさに感じた竹生島の明神が、白龍となって経正の袖に現われたという場面を表している。画面の情景は物語にほぼ忠実に描かれているが、白龍と化した神の姿は見られず、経正の周囲を囲むように描かれるおぼろげな空気の層が神の出現を暗示している。鎧や装束の描写には有職故実を深く学んだ跡がみられ、また澄んだ色調と謹直な描写には、梶田半古の影響が強く看取される。

本作は『平家物語』のなかの「竹生島詣(ちくぶじまもうで)」に取材した作品である。木曾義仲を追討するため、北陸道へ向かった平経正(つねまさ)は、琵琶湖に浮かぶ竹生島に立ち寄り、竹生島明神(弁財天)に勝利を祈願した。やがて夕暮れとなり、月明りのなかで経正が琵琶の秘曲、上弦(しょうげん)、石上(せきしょう)を奏でると、そのあまりの素晴らしさに弁才天の化身と思われる白龍が経正の袖に現われた。小林古径(こけい)(1883-1957)は、勝利を予感させる白龍の出現の場面を、経正の袖から立ち上る神秘的な煙によって暗示している。装束や甲冑の描写からは、気鋭の歴史画家、梶田半古のもとで有職故実を深く研究した成果がみられる。やがて横山大観や下村観山に次ぐ日本美術院の重要な担い手となる古径の、数少ない初期の歴史画作品のうちの一つである。